タイトル

日本らしい作業療法

 

講演内容

日本に作業療法士が誕生してから約50年以上経過してきている.欧米より取り入れられた作業療法はこの50年の間に大きく変化している。その1つに,作業療法理論の発展がある。過去において世界で多くの作業療法士が専門職としてのidentityを見失い,他職種の真似事に疑問を感じた。我が国も例外ではなく学会などで大いに議論された。そのような背景のもと作業療法理論は発展してきた。現在は海外で構築された作業療法理論が輸入されており,作業を基盤とした実践(Occupation Based Practice:OBP)や作業に焦点を当てた実践(Occupation Focused Practice:OFP)といった用語もよく耳にするようになった。

我が国の作業療法士はそれら輸入された理論などを学び,作業療法の成果を上げてきた事実がある。一方で,黎明期より海外の様々な作業療法を輸入してきた我々は,いつの間にか欧米は日本より優れていると感じ,盲信的になってきた節があると私は思う。海外の臨床を見て回ると,我が国より優れている部分もあれば,日本が優れている部分もある。さらに,臨床において海外の作業療法理論やツールを利用すると,我が国の文化やクライエントに適用することが難しいと感じることがある。我々は現在この現象について研究を行なっている最中であるが,日本独自の文化に起因する問題も存在し,この先には日本から発信できる問題解決法があると確信している。

一昔前にガラパゴス携帯という言葉が流行した.日本独自の発展をした携帯のことを指しており,私は日本の作業療法は海外の良いものを取り入れ独自に発展したというガラパゴス化をしているのではないかと考えている。日本には海外の作業療法にはない独特の良さが現れている。現在,日本作業療法士協会が推進している生活行為向上マネジメントや日本の研究者が開発したADOCなどのツールはすでに海外へ輸出を始めている。世界2位の作業療法士数を誇る日本らしい作業療法を発信する時代がもう到達してきている。

 

経歴

広島大学医学部保健学科作業療法学専攻卒。急性期から特養や在宅まで様々な臨床を経て大学教員専任講師を経験。その後,イムス板橋リハビリテーション病院のリハビリテーション科技士長として開設に関わる。作業を大切にしたOT部門を築き,外出,終了型訪問リハビリ,自動車運転,生活機能再建型上肢機能外来などのシステム構築をした.同院の介護保険系事業所長,診療技術部門長,グループのOT代表を兼任しつつ,2017年により東京工科大学准教授。日本臨床作業療法学会会長,運転と作業療法研究会世話人。保健学博士。

 

 
講師:澤田辰徳(さわだたつのり)

所属:東京工科大学 リハビリテーション学部 准教授

認定作業療法士