こちらの講演は学会終了後にオンデマンド配信が予定されています。
Web配信期間(閲覧できる期間):学会終了後~令和7年3月末まで
※参加登録された方はこの期間内のご都合がよい時間にいつでも視聴が可能です。
タイトル
「作業療法の曖昧さを引き受ける」
講師
上江洲 聖 Uezu Sei
琉球リハビリテーション学院作業療法学科
プロフィール
2001年沖縄中央病院精神科病棟、2003年沖縄赤十字病院回復期リハビリテーション病棟、2007年琉球リハビリテーション学院、2010年日赤安謝複合福祉施設、2022年〜琉球リハビリテーション学院.沖縄県作業療法士会副会長、日本臨床作業療法学会理事
講演内容
作業療法が対象とする人と作業と環境は相互影響によって変わり続けるダイナミックな存在である。したがって疾患や症状によって決まりきった答えがあるわけではない。作業療法士もまたクライエント、制限因子や促進因子として機能する環境(人間関係も含む)、作業療法という作業の影響を受けて変化し続ける。自らの意思で変わらないと決め込んでいても、一人で完結する仕事でない限り不変であり続けることはできない。これは環境因子の一つである組織や社会においても同じことが言える。作業療法士が体験を通して変わり続け、組織もその影響を受けて変化し、相互に新しい価値観や行動へと作用する。
変化がもたらす結果は望ましい状態とは限らない。何が正しいのか、良いのかは置かれた状況と立ち位置によって異なるため、ある時期における個人的な判断としてその瞬間を定義する。 つまり、私たち作業療法士の未来は、私たちが意思を持って、行動を起こし続けることによって、より望ましい方向へ近づける。私たちが動き出すことで、私たちに関係する人々の感じ方、考え方、行動に変化をもたらし、さらに私たちは新しい価値観や習慣を手にいれる。
絶対に正しい答えは存在せず、間違いのない歩み方もない。私たちは不安を抱えている時に正解やマニュアルを求める。しかし私たちは楽で安全に辿り着く方法がないことを理解している。迷い、戸惑い、憤り、悔やみ、苦しむ中でこそ、私たちは広く、深く、高い視点から未来の自分と社会を見つめることができる。
人は作業をすることで、その作業が馴染む人になっていく。疾病や障害に絶望したクライエントが、自分の人生を取り戻す過程に寄り添ってきたからこそ、作業療法の魅力と可能性を信じている。成功を主張する方法論に頼らず、唯一の正解がないことに失望せず、自分が期待する役割を手にいれることができると、私たちは経験的に理解している。
あなたが自信に基づいて行動できるようになれば、あなたは自分のことをポジティブで建設的な存在だと気づける。あなたが関わるクライエントや環境も影響を受け、あなたの感じ方と考え方に力を与えるようになるだろう。作業療法の曖昧さを引き受けることは失敗や批判を恐れない勇気が必要だが、それだけの価値がある。
講師
齋藤 佑樹 Saito Yuki
仙台青葉学院大学リハビリテーション学科作業療法学専攻 教授
プロフィール
〈所属・役職〉
学校法人北杜学園仙台青葉学院大学リハビリテーション学科作業療法学専攻 教授
日本臨床作業療法学会 理事
株式会社エシカル郡山 学術顧問
宮城刑務所 機能向上アドバイザー
臨床作業療法NOVA(青海社) 編集顧問
日本臨床作業療法研究 査読委員
日本作業療法学会 演題査読委員
AMPS認定評価者
〈講師略歴〉
2000年4月 一般財団法人 太田綜合病院附属太田熱海病院
2014年4月 学校法人こおりやま東都学園郡山健康科学専門学校
2016年9月 学校法人共済学院日本保健医療大学 設置準備室
2017年4月 学校法人北杜学園仙台青葉学院短期大学
2024年4月 学校法人北杜学園 仙台青葉学院大学
講演内容
対象者一人ひとりの健康と幸福を促進すべく作業を通して支援を行う作業療法はとても楽しくやりがいのある仕事です。しかし一方で、人―環境―作業の連環の中で評価・介入・成果測定をすること、中核概念である作業や作業遂行についての知識量や解釈がセラピストによって大きく異なること、社会的認知度の低さや既存のエビデンスの少なさ…etc。これらの作業療法特有の性質や現状は複雑に絡み合い、作業療法に「曖昧」な印象を与え、対象者、他職種、さらには同職種との間でさまざまな信念対立を引き起こします。
今回は貴学会より、拙書『作業療法の曖昧さを引き受けるということ(医学書院)』のタイトルになぞった講演テーマを頂戴しましたので、みなさんと一緒に「曖昧」と括られた要素を紐解きながら、そこから脱却していくための方略について考える時間にしたいと思います。