こちらの講演は動画配信が予定されておりません。
※対面開催のみ(会場限定)で講演が行われます。
タイトル
「作業療法士が行う保育所等訪問支援事業」
プロフィール
髙橋 知義 Takahashi Tomonori
株式会社 LikeLab 保育所等訪問支援事業 Switch
〈現職歴〉
2001年4月に社会福祉法人こぐま学園に入社し、14年間作業療法士として勤務。
幼児期から成人期と幅広い年齢を対象に、重度心身障害から発達障害とさまざまな困り感を持つ方々を対象に作業療法を実践する傍ら、生活介護事業所や就労移行支援事業所の管理者も務めた。
2015年4月に株式会社LikeLabに入社。
保育所等訪問支援事業所Switchを立ち上げ、現在は管理者を務めている。
その他、日本作業療法士協会生活環境支援推進室室員、八女市で福岡県障がい児等療育支援事業を受託、特別支援学校の外部講師専門家活用事業の講師、アシスティブテクノロジー・アドバイザー育成研修の講師、長崎大学子どもの心の医療・教育センターの講師を務めている。
〈著書〉
「作業療法士が行うIT活用支援」(共著、医歯薬出版)
「発達が気になる子の脳と体をそだてる感覚遊び」(共著、合同出版)
「脳と体をそだてる感覚遊びカード144」(共著、合同出版)
「発達が気になる子の学校生活における合理的配慮」(共著、中央法規出版)
「発達が気になる子の実行機能」(共著、中央法規出版)
「教室でできるタブレットを活用した合理的配慮・自立課題」(共著、中央法規出版)
「マンガでわかる読み書き指導」(共著、中央法規出版)
「発達をうながすハンドリング―生活動作の介助のポイント」(共著、三輪書店)
がある。
その他、特別支援グッズ「Qスプーン」「Qフォーク」の開発・監修をしている。
講演内容
保育所等訪問支援は、2012年の児童福祉法改正に伴う制度改革により創設された初のアウトリーチ型の支援である。これまでの基本は対象である子どもと家族が施設に通う通園スタイルであった。それに対して、保育所等訪問支援は専門職が子どもの生活の場に訪問するという、画期的な制度が実現したのである。そして、子どもが集団生活に適応することを目的に、直接支援や間接支援が行えるようになっている。
筆者は保育所等訪問支援を実施して9年目になる。これまで対象者の生活の場に訪問する中で、日々貴重な経験をさせていただいている。施設で実践していた頃も連携は重要であると理解していたつもりであるが、訪問を実施することで初めて気づく点や反省させられる点があった。環境の違いや言葉の捉え方、文化の違い等から本当の意味で連携をするには、このように生活の場に出向くことが重要であることを痛感している。また、訪問先と情報を共有し、同じ方向性で支援することで、子どもは格段に成長していく。
訪問先で役割を果たすためには、まずその訪問先の文化を知ることが重要である。同じ学校という場所に訪問しても共通の文化もあれば、その学校独自の文化もある。また、対象の子どもに関わる人の価値観や特性の理解度によっても大きく変わってくる。これらは対象者への関わる際と同じで、多様性を受け止めた上で、現場に寄り添いながら、支援に役立つ情報を提供してくことで信頼を培うことができる。一方的な提案や生活に直結しないものは必要とされない。
作業療法士は、人と作業と環境の相互作用によって作業遂行を作業、活動、動作、環境、これに発達的視点を交えて分析ができる職種である。またアプローチも、運動機能、感覚-知覚-認知機能などの対象者の能力を引き出し、発達を促すボトムアップのアプローチから、補装具、自助具、テクノロジー、環境調整などを用いて、対象者が持っている力を最大限に活かし、活動への参加を促すトップダウンのアプローチと幅広い視点でアプローチできる特徴を持っている。そして、何より作業療法士は「生活支援の専門家」である。これらのことから、ぜひ作業療法士は、対象者の生活の場である地域に出かけていくべきである。そしてそこでは想像を超える場面に遭遇するかもしれないが、作業療法の専門性を発揮する大きなチャンスであると考える。