1.最優秀演題賞 発表者:石井孝征

発表ありがとうございました。
除外項目としてUSNのある患者とされていますが重症度によっては軽微なUSN患者でもカットオフを上回れば運転可能なレベルの患者もいると思いますがどのレベルのUSN患者まで調査の対象に入れられたのか教えて頂けると幸いです。
ご質問ありがとうございます。
USNに関しては明らかに日常生活に支障のある症状を認める方に関しては除外しております。
また、USNや半盲の方の自動車運転に関しては様々な研究がなさており、一般的にはUSNや半盲の方運転は進めないという見解となっていますが代償が可能と話される方もいらっしゃるのが現状です。今後さらに研究が進めば何かしらのエビデンスが出てくると思います。

2.学会長賞 発表者:古海賢人

発表お疲れ様です。

生活課題が漠然と不安抱える対象者に対して、目標を明確化し、実際場面で確認するといった流れの中で、改めてCOPMなどのツールを用いて課題を抽出することに対する重要性を再確認できました。入院中に確認が難しい部分は訪問リハに繋げて引き続きアプローチを行う流れもすごく参考になりました。

私自身脳血管疾患の方を対象に面接を行うことが多いのですが、COPM、ADOCなどのツールを用いながら実施する中で、対象者の問題点・生活課題を具体的に抽出するためには、セラピストの対話のスキル(対象者のニーズを聞き出すスキル)が必要であり、日々その点に難しさを感じます。

前置きが長くてすみません。2点、先生に質問があります。
・今回の事例を通して対象者の生活課題を具体的に抽出する際に、先生が特に気を付けていた(意識していた)ことはありますか?
・訪問リハに繋げる際にどのような申し送りをしたのでしょうか?

以上の2点よろしくお願いします。

1つ目の質問である、具体的な生活課題の抽出時の工夫している点に関しては、今回の症例様に関しては、入院当初から自身の状況理解がしっかり行え、またコミュニケーション能力も良好であったため、生活歴の聴取において大きな支障はありませんでした。今回COPMを使用し改めて感じた事は、聴取した生活歴に対して目指す目標をどのように紐付けしていくか、セラピストの独りよがりではなく、症例や取り巻くチーム、家族と対話し進めていけるかが大切であるということです。また、COPMを用いた事で、コロナでしばらく足が遠のいていた市民センターでの体操といった大切な生活行為を思い出し、聞き出す事が出来ました。普段の何気ない会話だけでなく、しっかりツールを使用して面接を行う事は大切であると感じます。

2つ目の質問である、訪問リハビリに繋がる際の申し送りですが、当院の特色の一つとして現在訪問リハビリスタッフが病棟兼務として働いています。そのため、日々のフォローや外出訓練や退院前訪問時は同行してもらう事でその都度、症例様の状態を共有する事ができていました。その中で特に配慮した事は、入院時と退院時の目標を明確化し協業する事です。協業出来た事で、スライドの退院後の課題で提出した生活課題が具体化でき、早期に本人様の望む生活の獲得が行えたと考えています。

3.優秀演題賞 発表者:安部美咲

リハビリテーションの中に応用行動分析学(ABA)という条件付けアプローチを取り入れるという視点に真新しさを感じました。応用行動分析学はとてもシンプルですが誤解も多い学問です。またその基礎理論となるオペラント条件付けに対する認識を得ながら行わないと、私たちが平素行う他の技法と区別がつかなかくなってしまいます。そこでオペラント条件付けに伴う3項随伴性(弁別刺激・オペラント行動・強化子)をシンプルにまとめながら行動修正を促していきます。また、ABAは内的欲求に先行刺激を求めないはずです。症例のケースを拝見させていただくと、先行(弁別)刺激(心不全の増悪や友人とランチをしたいという欲求)⇨オペラント行動(身体機能低下)⇨強化子(転倒)というふうに行動分析をなされている部分もあるようですが、おそらくは、ABAの考え方から解釈すると、お決まりの場面で「転んでしまう」というのがオペラント行動に当たると私は考えます。そこから転んでしまう行動を引き出す先行刺激、例として「夫や友人のから連絡や見舞いの後など』を導き出します。そこで、先行刺激を操作します。訓練前後には連絡を取り合わないないなど。それができたときは、強化報酬を、できなかったときは負の刺激(例:外泊を中止しましょう)など、を提供していきます。そうしてクライエントが、オペラント行動を発現しないよう操作していきます。私が捉えるABAは、オペラント条件付けの臨床的応用と考えているのですが、私自身の認識不足もあると思います。  そこで質問ですが、先生自身が、症例の問題行動を考える際に行った行動分析(なぜ転倒という行動が強化子になってしまったのか、身体機能というコンディションを行動に持ってきてしまったなど)の裏づけや類似の先行研究などがありましたら教えていただきたく思います。
 最後になりますが、先生の研究には大変、感銘を受けておりますので、今後も継続してケースを増やしていただきたく思います。そのためにもABAに対する認識の捉え直しも若干必要かと感じさせていただきました。
「リハビリテーション効果を最大限に引き出すコツ 応用行動分析で運動療法とADLは変わる 第3版」を参考に、私自身も応用行動分析について勉強しています。

先生からのご指摘の通り応用行動分析の先行刺激に内的欲求は当てはまらず、応用行動分析学は、個人の性格や心の内面の問題には着目せず、患者を取り巻く環境要因を変化させることで行動の問題に対応していこうとする学問です。

本症例は、身体機能の低下(先行刺激)がありながらも負荷量が調節できず、家庭内の役割(行動)を行ったことで、更に身体機能が低下(後続刺激)していきました。徐々に慢性心不全が増悪(先行刺激)し、動けなくなり過度の安静(行動)となったことで転倒(後続刺激)を招いたと考えました。そのため、今回行った分析の中で転倒は問題点として捉えず、身体機能の低下や慢性心不全の増悪がありながらも負荷量を調節できないことを問題点として捉えています。

4.特別活動賞 発表者:板井幸太

T字杖での移動獲得における予後予測に、コース等の動作性IQを主体とする構成能力が関連しているかもしれないということに大変興味を持ちました。実践では、重度認知症ではない歩行器歩行や杖でも見守りが必要な方(今後T字杖で自立の必要性がある)を対象にコグニサイズ(運動+構成課題)等を導入すると効果的かもしれないということでしょうか?また、移動能力だけでなくADL動作に活かすにはどのように介入していけばよいでしょうか?考えを聞かせていただけると幸いです。よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。今回の検証結果では,介入時にKohs点数が年齢平均より高い場合は,コグニサイズなど前頭葉を活性化させる事が効果的であると考えます(あるいは、その獲得したい動作を反復した介入が効果的であると考えます)。その為,ADL動作に関しても,動作手順を口頭にて説明やパンフレットを用いて説明するのではなく、全体法での動作訓練を行うか部分法にて細分化しながらの動作訓練を実施すると良いと考えています。Kohsのカットオフ値に関しては、学会後にROC曲線にて統計処理をとった結果82点と得られました(中等度の精度)ので、この結果に関してもいずれかの学会で報告予定です。

5.脳血管疾患等 発表者:羽生真奈美

使用頻度向上に向けたチェックリストを活用した介入がすごく参考になりました。片麻痺の方に対して、ADL動作を指導する際にどうすれば動作が行いやすくなるかは介入する際に常に悩んでいます。介入初期は洗体動作での満足度が低かったので、洗体動作に関して、どのような練習を行ったのか、動作を行いやすいようどうように工夫されたのか(症例の方に合わせた動作指導等)教えていただければ幸いです。よろしくお願いいたします。
ご質問ありがとうございます。
 今回の症例に関しては、一人でADL動作を行うことへの恐怖心や依存心が強かったため、多職種と連携し、毎日正のフィードバックを行い、自己肯定感を高められるような関わりを心掛けました。
 洗体動作に関しては、本人は退院後ご家族との入浴を希望されていましたので、ご家族にどの程度協力が得られるのか聞き取りを行い、訓練を行いました。また、家屋調査の際にデモ機を使用しながらご家族に対して動作指導を行い、退院時には動作手順の資料を配布しました。
 訓練はチェックシートと課題指向型アプローチを併用しながら頭部等へのリーチ訓練を反復して行いました。実動作練習では、自助具(長柄ブラシ)を使用し麻痺側上下肢への洗体練習を行いました。

7.脳血管疾患等 発表者:錦戸悠

ロボット療法のメリットとして量的練習の確保であると思うのですが1期目より使用せず3期目からロボット療法を導入された理由があれば教えて頂きたいです。
 ご質問ありがとうございます。
 今回の症例に関しては介入当初から筋緊張が高く、端坐位など抗重力位での運動は代償動作が著名に見られやすかったため、筋緊張の過度な亢進や痙性の増悪を助長すると考えたため一期目では敢えてロボット療法を行わずに分離運動がしっかりと見られ始めた3期目から行いました。
 介入当初の筋緊張や痙性が強くないような症例ではむしろ早い段階で運動量を確保するためにロボット療法などは積極的に取り入れるべきだと考えています。
注意障害のある片麻痺の方に対して、生活場面で麻痺側上肢の使用を促すために使用する場所に貼り紙を設置するという工夫点が参考になりました。第1期では、近位部へ介入をされていましたが、箸操作や書字動作に関して、課題指向型訓練を始める前にまたは並行して、機能訓練をされていたら内容を教えていただきたいです。また、自助具等は好まれなかったとありましたが、生活へ汎化するためのトランスファーパッケージを行う中で、環境調整をした点があれば教えていただければ幸いです。
 注意障害に関しては今回の症例では日常生活に大きく支障をきたすほどの注意障害ではありませんでしたが張り紙などで意識付けすることにより生活場面への汎化が図れたと考えています。
 課題指向型訓練へと移行する際の機能訓練に関してはIVESを使用した電気刺激療法を前腕・手指へと変更し、遠位部の筋の賦活を図りました。また、ノーマルモードでの単純な刺激入力からパワーアシストモードで本人の自動運動主体の訓練を行うように段階付けを意識して行いました。動作としては手指の屈曲・伸展、対立動作などを中心に機能訓練を行いました。
 環境調整に関しては、上肢の分離運動に合わせて使用する道具を自助箸を使用するなどの工夫を行いました。

10.脳血管疾患等 発表者:宇野航

貴重な発表ありがとうございました。発症より随意性に乏しく、高次脳機能障害や2横指の亜脱臼と重度な症例に対し、低周波を用いた介入にてBRSだけでなくFMSも大きな改善が図れていますが、『power assist modeでの低周波を行っているとありましたが、半側空間無視により、麻痺手のイメージングが行えない状況でどのように介入をしたのか?』と、『弛緩性麻痺の患者に対しての脳画像所見として皮質脊髄路の損傷はどの程度あったのか?』の2点をお聞かせ頂きたいです。
ご質問ありがとうございます。IVESでのpower assist modeを用いたのはまず発表スライド内、経過1期での normal mode(FEE)を用いて麻痺手の随意性の向上、半側空間無視の軽減、麻痺手のイメージングを図りました。その後麻痺側上肢の随意性向上が見られた頃からスライド内の経過第2、3期にてpower assist modeに移行しShaping、task practiceを実施しました。
もう一つの質問である皮質脊髄路の損傷は、右被殻からの出血が視床を圧迫している状態でした。ご質問の答えになっているでしょうか?ご聴講いただきありがとうございました。

11.呼吸器疾患 発表者:堂面裕紀

パンフレットを用いた実際の獲得したい動作に繋がる呼吸方法の指導が参考になりました。呼吸同調練習を口頭で行うと呼吸困難感を誘発していたとありましたが、なぜその指導方法では上手くいかなかったのかを症例の方の個別性を含めて教えていただければ幸いです。また、心的状態に合わせたパンフレット指導とありましたが、症例の方はどのような心的状態だったのでしょうか?介入初期から後期にかけて心的状態の変化を教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。
今回介入当初は一般的な呼吸同調(呼気に合わせて動作を行う)の方法を指導しておりましたが、症例の場合は呼気することにばかり意識がいってしまい、動作との連動がうまくいきませんでした。また数日同様の訓練を繰り返し指導しましたが、逆に息切れ症状を誘発しており、心的状態としては不安や緊張、焦りがあったのではないかと考えます。また介入初期から後期にかけて心的状態についてはあまり変わりありませんでしたが、パンフレット指導に方法を変えてからは、本人の動作・指導に対する受け入れについては良くなっていった印象があります。

21.認知障害(高次脳機能障害を含む) 発表者:小窪雄介

貴重な発表ありがとうございました。勉強不足ではあるのですが、運動開始困難は意識下の運動で出現する障害とのことですが、患者本人の病識や自発性に関しては介入中どのような状態だったのか教えて頂けると幸いです。 また今回は急性期での介入であり今後機能改善には長期的な介入が必要であると思われますが、運動開始困難の予後的な部分も教えて頂けると幸いです。
ご質問ありがとうございます。
自発性は低下しており、病識に関してはADL上でも評価するのは非常に難しく明らかに病識が低下しているとは言えません。

運動開始困難の予後としては、先行研究では比較的良好な結果を辿っているケースは多いですが、中には若干例残像するケースも存在していました。
稀な症状ではあるので、今後もより予後なども含めた病態解釈は必要だと思います。