タイトル
「宮崎における自動車運転支援の現在地-医療・地域・制度の架け橋としてのリハ職の役割」
講師
岩切 良太 Iwakiri Ryouta
日南市立中部病院 診療課 リハビリテーションセンター 主任
プロフィール
略歴:
(学歴)
2007年3月 九州保健福祉大学保健科学部作業療法学科卒業
2015年3月 九州保健福祉大学(通信制)大学院保健科学研究科修士課程卒業
2023年3月 東京都立大学大学院博士後期課程人間健康科学研究科単位取得後満期退学
(職歴)
2007年4月 医療法人三晴会 金丸脳神経外科病院
2014年3月 慈英病院
2015年12月 医療法人ハートピア 細見クリニック重度認知症デイケアかなりあ
2015年1月 日南市立中部病院 診療課 リハビリテーションセンター 現在に至る
(その他活動)委員歴
2022年5月… 現在 宮崎県作業療法士会, 副会長理事(自動車運転)
2023年4月… 現在 日本運転リハビリプロジェクト, チームリーダー コアメンバー
2023年8月… 現在 宮崎県, オレンジチューター
2023年8月… 現在 九州ドライビングプロジェクト, 副リーダー
2023年12月… 現在 宮崎県認知症アドバイザー
2025年2月… 現在 日南市在宅医療介護連携推進委員会, 委員
2025年3月… 現在 運転と作業療法学会, 正会員
2025年4月… 現在 日南市 串間市, 日南串間市障害者認定区分審査会第一合議体議長
2025年5月… 現在 串間市医療介護在宅連携協議体, 串間市医療介護連携協議体委員
他
書籍:(著書)
・2025 年4月 臨床作業療法NOVA「ようこそ地域作業療法へ」編著
・2023 年3月 臨床作業療法認知作業療法と生活支援事例 株式会社青海社
他
(論文)
・認知症患者への対応とその視点—認知症の人の生活と作業療法 ; 作業療法による生活支 援の実際 ;医療施設での生活支援の展開 岩切 良太 臨床作業療法nova 20(1) 132-136 2023 年 査読有り招待有り
・Association between attentional function and blink-suppressed pinch strength Yoshihiro TANIKAWA, So MIYAHARA,
Kuniaki NAGAI, Ryota IWAKIRI International Journal of Medical Science and Clinical Invention 11(9) 7249-7256 2024 年9
月 査読有り
他
講演内容
地方都市において少子高齢化を始め、地域における交通や移動、自動車運転における支援や連携は必要不可欠となっています。一方で高齢者における自動車事故も多発しており、リスクと生活の両輪に視点をおいてかかわらなければなりません。
自動車運転支援は医師の指示のもと実施されるもので、作業療法士以外の他職種との連携が重要です。現在の自動車運転支援は運転の再開支援にとどまらず、免許返納後の支援も重要視されてきています。それらの中で作業療法士の関与が進んできている点として、作業療法士は「作業(occupational)」という観点から、運転を移動手段/活動参加の手段と捉えて支援する立場にあります。日本作業療法士協会でも「自動車運転も日常生活における移動手段のひとつとして大変重要な『作業』であり、作業療法士はその支援に関わっている」とされています。
作業療法士は、「移動支援」において、単に身体機能を高めるだけではなく、その人が自分らしい生活を送るために、移動という“作業”をどう実現するかを支援する専門職であるとも考えます。さらに運転免許返納後の移動支援において、本人の「移動したいというニーズ」を生活の視点からとらえ、代替手段を見つけ出し、その人らしい生活を続けられるよう支援する重要な役割を担います。高齢者や障害をもつ人にとって、運転は単なる移動手段ではなく、買い物・通院・交流・役割(仕事や家族送迎など)を維持する手段です。免許返納は「自由の喪失」や「社会的孤立」につながる恐れがあるからこそ、返納後の「移動手段の再構築」は 生活機能支援の一部であり重要なことです。
また、地域レベルでも、宮崎県作業療法士会が「運転支援事業」を立ち上げ、高齢者・高次脳機能障がい者の運転支援(実車評価を含む)や、医療・福祉関係者の育成研修を実施しています。
医療・福祉・地域の連携の流れとしては、宮崎県の「高齢者保健福祉計画」などでは、医療・福祉・地域(在宅)をつなぐ体制整備が明記されており、リハビリテーション専門職(理学療法士・作業療法士等)の確保・資質向上も掲げられています。
つまり、運転支援というテーマも「病院・リハビリ→退院・在宅・地域移動支援」という流れの中で位置づけられており、OTがこの“橋渡し”的機能を担う期待があると考えられます。
今回は、認知症支援や地域支援も専門にする演者が宮崎における取り組みを課題と未来の展望を踏まえ講演させていただきます。