参加申込期間:令和7年12月22日(月) ~ 令和8年2月22日(日)まで

教育講演3 – 塩津 裕康

タイトル

学校作業療法の実践と展望

講師

塩津 裕康 Shiozu Hiroyasu

名古屋市立大学医学部保健医療学科リハビリテーション学専攻・講師

プロフィール

〈略歴〉
2008年に作業療法士免許取得後、2015年に川崎医療福祉大学大学院医療技術学研究科にて博士(リハビリテーション学)を取得。日本人で初めてInternational Cognitive Approaches Network(ICAN)から認定を受け、2020年に認定CO-OPセラピスト、2022年に認定CO-OPインストラクターとなった。また、ICANのCommunications Committeeのメンバーを務めている。

〈社会貢献〉
・ NPO法人はびりす Habilis Lab.所長
・ 名古屋市教育委員会 特別支援教育アドバイザー
・ 大阪府教育庁高等学校支援教育力充実事業専門家チーム 構成員
・ 日本作業療法士協会 制度対策部部員
・ 社会作業療法士協会 常任理事 等

〈書籍〉
・ 子どもと作戦会議 CO-OPアプローチ入門(クリエイツかもがわ)2021.
・ 子どもと作業中心の実践OCP 作業療法ガイドブック(クリエイツかもがわ)2023.
・ 子どもの「できた!」を支援するCO-OPアプローチ(金子書房)2023.
・ すべての小中学校に「学校作業療法室」飛騨市の挑戦が未来を照らす(クリエイツかもがわ)2024.

講演内容

アメリカ作業療法士協会(AOTA)が実施した2023年の作業療法士(OT)の職場調査によれば、病院勤務のOTが全体の22%であったのに対し、「早期介入」および「学校作業療法」に従事するOTは25%を占めており、作業療法の実践の場が医療機関から地域へと移行しつつある現状が明らかとなっている(AOTA, 2023)。この変化は、社会的ニーズの高まりを反映するとともに、作業療法士自身が「活動」や「参加」への支援に一層重点を置くようになってきていることにも起因していると考えられる。

筆者らも、岐阜県飛騨市において地域社会における作業療法の実践に取り組んでおり(塩津ら,2024)、その中でも「学校作業療法」の実装について紹介したい。本取り組みは、作業療法士単独では成立せず、教育・保健医療・行政の三者が連携して初めて可能となる、インクルーシブ教育システムの構築を目指すものである。本実践においては、支援のコアテクニックとして〈Cognitive Orientation to daily Occupational Performance(CO-OP)アプローチ〉を、支援提供モデルとして〈Partnering for Change(P4C)〉を採用し、スクールワイドの支援体制を展開した。その結果、一定の成果が確認されている。

現在、筆者らはこの取り組みを多地域へと展開していくため、新たなプロジェクトを立ち上げている。その中核となるのは、(1)支援技術の体系化、(2)支援者を育成する教育システムの開発、(3)支援の質を担保するためのICTシステムの開発、の三点である。加えて、自治体間での知見と経験の共有を可能とする場を設けることも重要であり、その一環として、各地域の実践知を集約するコンソーシアムの設立を計画している。これら今後の展望について、その一端をご紹介できればと思う。

*これらの取り組みは、JSPS研究費23K02581「小学校におけるCO-OPを基盤とした教諭と作業療法士の協働モデルの構築」およびJST・RISTEX「SDGsの達成に向けた共創的研究開発プログラム(SOLVE for SDGs)」の助成を受けたものである。