参加申込期間:令和7年12月22日(月) ~ 令和8年2月22日(日)まで

市民公開講座 – 田平 隆行

タイトル

個性と能力を発揮できる認知症リハビリテーション

講師

田平 隆行 Tabira Takayuki

鹿児島大学医学部保健学科作業療法学専攻 教授

プロフィール

〈略歴〉
1993年 長崎北病院リハビリテーション科
2001年 国際医療福祉大学保健学部作業療法学科
2004年 長崎大学医学部保健学科
2007年 長崎大学大学院医歯薬学総合研究科保健学専攻
2011年 西九州大学リハビリテーション学部
2016年 現職

講演内容

2023年認知症基本法「認知症の人を含めた国民一人一人がその個性と能力を十分に発揮し,相互に人格と個性を尊重しつつ支え合いながら共生する活力ある社会(=共生社会)の実現」(古い認知症観から新しい認知症観へ)を基に,2024年基本計画が進められている.「個性と能力を発揮できる支援」は作業療法の得意とする考え方である.

当事者の価値観や生活史,興味,役割から「大切な活動」を引き出し,手続き記憶や感情記憶のような残存能力を活用して,その活動に関わり,満足度や遂行度を高める支援が重要である.その目標志向型支援の手法として工程分析や難易度調整,活動日記等がある.

一方,個人にとって大切な活動は,地域性や年齢,性別,重症度,疾患特性などによって共通性も見いだせる.例えば,鹿児島県垂水市の大切な活動調査では,社会活動としては墓参りを,趣味活動としては園芸を重要とする高齢者が多く,その活動への満足度の高さは記憶力や精神的健康に寄与することが分かってきた(Hidaka 2025, Akaida2024).

また,認知症になっても日常生活等に残存能力を活かすことができる.例えば,重度な認知症高齢者においても調理の「食材加工」や洗濯の「干す・たたむ」は比較的残存しており,役割の一つとして活用できる可能性を示した(Tabira, 2022).

そして,日常生活の困難さがみられる部分においては,ラベリングなどのわかりやすい環境調整や家族介護者への介護教育支援によって認知機能は変化なくても日常生活の自立度が高まることを明らかにした(田平,2021).

このように,日常活動を含め本人が大切とする活動を詳しく分析し,支援することは,住み慣れた地域で暮らし続けられる一助となる.認知症の方が個性と有する認知機能・身体機能を最大限に活かした支援をしていきたい.