特別講演③ / 淡野義長｜第25回（2022年開催）

タイトル

「災害時の支援におけるリハビリテーション専門職の役割～災害リハビリテーション支援という考え方と作業療法～」

質疑応答

プロフィール

淡野義長
一般社団法人是真会　長崎リハビリテーション病院
テクノエイド部部長・人材開発部副部長

一般社団法人是真会　テクノエイド部部長
人材開発部副部長
認定作業療法士
福井医療技術専門学校（現：福井医療大学）卒業
リハビリテーションセンター、専門学校、リハビリテーション病院での勤務経験あり

講演内容

阪神淡路大震災や東日本大震災にみるような、広域で大規模災害が記憶にあるところでしょうが、一方で地震、台風、線状降水帯、亜熱帯低気圧などによる局地災害や広域災害は毎年のように複数個所で発生しています。今年の佐賀武雄での六角川の氾濫は、前回は２年前のことになります。数十年に１度の災害や、１ヶ月の雨量が数時間で降った、などということは、本来ならば極めて珍しいことのはずですが、最近では耳慣れしてしまっているところは否めません。

加えてこの２年は新型コロナウィルス感染症における感染防御が課題となっており、避難行動や避難所そのものの考え方が、より現実的になったように感じています。災害備蓄品や避難所運営はマニュアルが改訂されていますが、この感染禍では避難訓練や避難所運営訓練も十分できないような状況です。災害は待ってはくれませんので、実践の中で創意工夫している姿をみることになります。

東日本大震災では、初めてリハビリテーションの関連団体がまとまって活動したという、災害リハ元年のような動きを経験できました。それまでの災害では、職能団体単位や有志の団体や個人ボランティアが活動する場面が多かったかと思います。あるキーワードで、まとまりのある支援をしてくれた方が、受援者側から見ても、わかりやすくて、手間もかからないということもわかりました。現在の一社日本災害リハビリテーション支援協会（JRAT）の前身がその役割を担いましたが、いくつかの過程を経験することが出来ました。JRATは医師を中心としたリハビリテーション医療支援ということで、制度的にも位置付けるために、災害救助法での解釈など法的なところを含めて対応していました。これ活動は個人ボランティアではなく、複数団体による集合体としてのフォーマルな活動であるというアピールを含めて、対外的にもわかりやすくということは意識していました。当初現場では「災害時になぜリハビリなんだ」という声はよく耳にしましたが、急性期から廃用症候群や二次的合併症に理解のあるリハ医療の関係者が、廃用予防と動くことの重要性を啓発し、生活不活発の予防やDVTの予防などにかかわることで、DMAT（災害派遣医療チーム）の方々にもその必要性が理解されてきました。

どうしてもOTなどの対人援助職では、その人に対応することが得意な職域なので、避難者を見がちになります。これは大変重要なことですが、避難所や避難者にたどりつくまでに、また、何かをやってあげるのではなく、避難者自らが能動的に安全に動けるようにするためには、組織的な活動が不可欠です。今回はJRATの動きを例に組織的な活動を紹介しながら、災害時にOTが専門職能を生かして活動するためにはどのようにするのかを、ともに考える機会としたいと思っています。

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