タイトル

「東日本大震災後にはじまった手仕事と心の回復」


質疑応答

 

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プロフィール

飛田 恵美子
フリーライター

〈学歴〉
2006年明治大学政治経済学部卒

〈職歴〉
タウン誌編集、まちづくり会社勤務を経て独立。2013年、牡鹿半島で地元女性たちとものづくりを行う『一般社団法人つむぎや』とともに、東北の復興ものづくりを紹介するウェブマガジン『東北マニュファクチュール・ストーリー』を開設。100以上の団体を取材し、2019年に書籍『復興から自立への「ものづくり」』を出版。

〈著書・メディア〉
●書籍『復興から自立への「ものづくり」』(小学館) https://www.shogakukan.co.jp/books/09388676
●東北マニュファクチュール・ストーリー http://www.tohoku-manufacture.jp/
●個人サイト 言祝ぐ http://www.cotohogu.com/
●書籍出版に合わせ、代官山蔦屋書店や三省堂書店などで東北の手仕事フェアを実施。神保町ブックセンターにて、作業療法士をゲストに呼んだトークイベント「ものづくりと心のケア」を開催。
● 雑誌ソトコトで『SUSTAINABLE DESIGNPRODUCT』コーナーを担当。


講演内容

鹿角と漁網の補修糸を使ったアクセサリー、支援物資として送られてきたTシャツで編む布ぞうり、原発事故により帰れなくなった故郷のマスコットキャラクターを模したぬいぐるみ……。東日本大震災後、東北各地で数百もの「ものづくり」が生まれました。現在までに活動を終了した団体もありますが、NPOや会社を立ち上げ継続している団体も少なくありません。

失った仕事の代わりに小さな収入を得るため、避難所や仮設住宅で新たなコミュニティをつくるため、何もすることのない避難生活のなかで気を紛らわすため。ものづくりを始めた動機は団体によってさまざまですが、多くの団体に共通して聞かれたのが「ものづくりをするうちに、つくり手が元気になっていった」という発言です。被災のショックから食事も喉を通らなくなってしまった人がみるみる元気になり、「自分が救われたから」と周囲の人を誘うようになった。70代、80代の方々が新しいことを始める面白さに目覚め、震災前よりもアクティブになった。そういったエピソードは枚挙に暇がありません。

なぜ、ものづくりが心の回復に寄与したのでしょうか。取材を続けるうちに、次のような要因が見えてきました。津波の恐ろしさや喪失の悲しみが頭を離れないなか、手を動かしている間だけは何も考えず没頭できたこと。被災の度合いや受け止め方の違いが大きな分断になりかねない状況において、言葉を交わさず誰かと一緒にいられ連帯感を感じられたこと。自分の手の中でひとつの作品ができあがり、それが人に褒められ喜ばれるという体験が、自己肯定感や自己効力感を取り戻すきっかけになったこと。こうしたものづくりの効用を正しく捉え、今後の災害時に役立てることも重要だと思っています。

その際に考えたいのが、心の専門家との連携です。震災後、臨床心理士や作業療法士が心のケアを提供しようとしても、「自分には必要ない」と断られてしまうケースも多かったと聞きます。一方、ものづくりの活動が意図せず心を癒やし、専門家ではない人が自覚のないまま心のケアに携わる状況が生まれていました。活動の性質や規模が変化していく途中では、求められる品質や納期についていけず劣等感を感じる方が出てしまうなど、摩擦もあったようです。心の回復過程に関する知見や豊富な経験を持つ専門家との協力体制があったなら、防げたトラブルもあったのではないでしょうか。東日本大震災から10年が経過したいま、こうしたことを改めて振り返られたらと考えています。


タイトル

「デイサービス利用者の生産活動-Roren-による社会参加がもたらしたもの」


プロフィール

香月 真
社会福祉法人シティ・ケアサービス シティデイサービス長住
作業療法士

〈現職歴〉
社会福祉法人シティ・ケアサービス シティデイサービス長住

デイサービスを利用する高齢者の多くは、その健康状態ならびに個人因子・環境因子が複合的に絡み合い、家庭や地域において役割を果たしながら主体的な生活を送る事が難しい状況にある事が多い。作業療法士はその専門性から地域において「活動」や「参加」に焦点を当てた介入を期待されながら、既存のサービスの枠組みや時間的、制度的、人員的な問題から十分なアプローチが行えていない状況があった。

そこで2015年より、社会参加や多世代交流、相互理解の場を創出し、デイサービス利用者が再び社会と繋がる為、デイサービス利用時間中にそれぞれが培った技術や適切な支援によって行える活動によるモノやコトづくりといった生産活動を行い、それを積極的に地域社会と結ぶことによって役割を獲得する「Roren」という活動を行っている。これまでに無印良品をはじめ県内外の店舗やギャラリーでの作品の展示販売に加え、新たに衣装制作・インテリア制作・智慧や技術を伝えるワークショップなどの依頼を受け活躍の機会を得ながら活動を継続している。
O Roren
https://roren0312.wixsite.com/roren0312


講演内容

コロナ禍において、全ての人が経験している【社会との繋がりが希薄になる心細さ】【生活すべてに制限がかかる不自由さ】【自身が何も出来ない歯がゆさ】【明日の事がわからない不確かさ】それは多くの高齢者が日常で感じているまさにそれではなかったかと思います。同時に今回の対談における震災被災者のそれでもあったのではないでしょうか。そして、【大切な誰かや期待してくれる誰かを想い】【自身が出来る事が活かされ】【人と人が繋がっている実感】が人生の明日にどれほどの意味をもたらすのか。コロナ禍の経験は多くの人にそれをジブンゴトとして実感させる機会となりました。

都市部高齢者がより良く生きるために始まったRorenや被災後に様々な理由から始まった活動の数々。模索した「人」「作業」「環境」における取り組みは、医療分野のみならずこの時代やこれからの地域社会に向けて「その人らしさ」が発揮されるうえで一つの道標となるはずです。

今回の対談にあたって、震災後被災した各地でみられた作業を通じた関わりや参加者や地域復興が辿ったプロセスを作業療法的な視点や効果に注目し取材してこられた飛田さんに、活動の起こりや経過、障壁や解決策などをRorenと比較しながら共通点、相違点、作業療法的な効果や期待される事について意見を交わしたいと思います。


対談

「作業のチカラと作業療法士のアイデンティティー」

「ものづくり」という活動が意味のある作業になった時、それはチカラを発揮します。その人にとって意味のある作業をどのようにして引き出すのか、そして、その人の思いをどのようにつむぎ、カタチにしていくのか、あなたならどうしますか?


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