タイトル

「こころをつむぐ作業療法~コロナ禍を超えて目指す作業療法士の姿~」


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プロフィール

香山 明美
東北文化学園大学医療福祉学部 リハビリテーション学科作業療法専攻 教授
日本作業療法士協会副会長

〈略歴〉作業療法士(専門作業療法士:精神科急性期)
1983年 国立仙台病院付属リハビリテーション 学院作業療法学科卒業
1983年 宮城県立名取病院勤務
2003年 宮城県立精神医療センター社会復帰科 作業療法係長
2006年 同 リハビリテーション科長
2011年 地方独立行政法人県立病院機構 宮城県立精神医療センター リハビリテーション科長(上席主任作業療法士)
2014年 同 地域支援科長兼訪問看護ステーション長
2016年 みやぎ心のケアセンター 地域支援課長補佐
2018年 東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科作業療法学専攻教授
2020年 東北文化学園大学医療福祉学部リハビリテーション学科作業療法学専攻 専攻長 教授

〈学会活動〉
(一社)日本作業療法士協会副会長(事務局長)
東北精神保健福祉学会理事
臨床精神障害作業療法研究会理事    他

〈著書〉
・セラピストのための認知症家族支援マニュアル.文光堂.2018
・生活を支援する精神障害作業療法 第2版,医歯薬出版,2014
・共著:作業療法学全書第5巻作業治療学2精神障害.協同医書出版社,2010
・作業療法の面接技術-ストーリーの共有を目指して-.三輪書店.2009 他

〈趣味〉
圧力鍋料理


講演内容

はじめに・作業療法の定義
理学療法士及び作業療法士法では「『作業療法』とは、身体又は精神に障害のある者に対し、主としてその応用的動作能力又は社会的適応能力の回復を図るため、手芸、工作その他の作業を行なわせることをいう。」と定義されている。

2018年5月に改訂された日本作業療法士協会の作業療法の定義は、近年作業療法士に求められるニーズに対応できるものとして「作業療法は、人々の健康と幸福を促進するために、医療、保健、福祉、教育、職業などの領域で行われる、作業に焦点を当てた治療、指導、援助である。作業とは、対象となる人々にとって目的や価値を持つ生活行為を指す。」と改められた。

これまで作業療法士は理学療法士と共に医療職として養成され、多くの作業療法士は医療を基盤にその業務を行ってきた。応用的動作や社会的適応能力の回復に貢献できるためには、あるいは人々の健康と幸福を促進するためには、医学的知識を基盤に対象者の生活をより身近なところで支援できる知識と技術が求められている。

COVID-19を経験して
2019年12月以降、全世界に拡大した新型コロナウイルス感染症は多くの命を奪った。日本における感染症者数は168万人、死亡者数は17,224人におよんでいる(2021年9月19日現在)。この約1年半
の間に感染が拡大するたびに緊急事態宣言、蔓延防止措置等が講じられ、国民の生活は様々な自粛・制限を強いられることになり、作業療法士の臨床現場や養成教育にも大きな影響を与えている。

〈臨床現場への影響〉
●入院患者の行動制限
●通所系サービスの自粛・制限
●訪問系サービスの自粛・制限
●作業療法実施場所の制限
●家族との交流の制限
●退院に向けた準備(退院前訪問、家族との交流等)制限
●就労に向けた準備等における限界〈養成教育への影響〉
●遠隔事業
●臨床実習の中止・学内実習
●実技系・グループワーク利用授業の制限
●Webシステムを利用した学生同士、学生教員間の交流が可能
●一方通行の授業・学生の理解度が確認できない
●学生同士の交流の減少
●体験型で理解する機会が激減・現実感の持てなさ
●臨床実習体験不十分なまま卒業

これまでの災害支援活動からの学び
東日本大震災をはじめとして、これまでの様々な災害支援活動を行ってきた。その中から明確になった作業療法士の役割を示す。
1.避難所・仮設住宅の環境整備・環境調整
2.生活リズムの形成や活動性を引き出す活動の展開
3.避難所・在宅・仮設住宅における身体機能が低下した高齢者・障害児者への個別対応
4.避難所・在宅・仮設住宅における精神機能に障害のある避難者への個別対応
5.被災した住民を対象とした主体的な活動を促していく支援更に、有事に備え
●平時から他職種との連携と活動を強化し組織化していくこと
●行政との連携を強化し、支援対象者は、その地域に住む一人の生活者として、地域包括ケアシステムへのスムーズな移行が重要であることが明確になった。

地域包括ケアシステムに資するこれからの作業療法士の姿
2025年を目途に進められている地域包括ケアシステムの中で作業療法士が貢献できるためには、今までの作業療法士の役割に加え多様な場所で多様な役割を果たす必要がある。

地域ケア会議への参画を始めとして、様々な課題に取り組む必要がある。
●住民・地域の課題
●社会資源の課題 ・介護 ・医療 ・住まい ・予防 ・生活支援
●支援者の課題 ・専門職の数、資質 ・連携、ネットワーク

これからの作業療法士の役割は、医療や保健、福祉等という概念を超え、対象者が地域の中で生活していくことを支援できることである。以下の3点で整理をしたいと思う。
●医療における早期退院・重度化防止に向けた取り組み
●医療・介護・保健・福祉の取り組みと連携強化(特にアウトリーチ型の支援の重要性)
●地域共生社会の実現に向けた取り組み(住民の力を引き出す支援)

おわりに・変わらないこと
時代や状況は変わっても「作業療法士は作業を用いて人を元気にしていく」。このことは普遍なのである。


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