タイトル

「作業療法士が臨むケア会議の在り方」


質疑応答

 

ご質問はこちら 講師からのご回答

 


プロフィール

安永 昌徳
株式会社ライフステージ 社長

〈職歴〉
2000年 資格取得
2000年 静岡県農協共済中伊豆リハビリテーションセンター勤務
2010年 宗像市 介護老人保健施設 宗像アコール勤務
2014年 株式会社 ライフステージ起業

〈有資格〉
ケアマネージャー/認知症ケア専門士/児童発達管理責任者

〈その他〉
介護認定審査委員/宗像市ケア会議委員


講演内容

【はじめに】
近年、どの地域においてもケア会議が定期的に開催されている。それに伴い、会議の質の向上についても、ようやく議論されるようになっている。
今回は宗像市内の各エリアで開催されるケア会議を材料に、ケア会議に参加する作業療法士の一助になるよう、これまでの経験を踏まえて考察してみた。

【ケア会議のとらえ方】
私たちが住む『地域』には、本当に様々な人種と課題とが混在する。主に、認知症などの疾患や、活動性の低さなどの『人に起因する課題』や、自宅の生活環境の不具合や坂・段差の多さ、また店舗・公民館までが遠い、といった『生活・周辺環境に起因する課題』、そしてご近所との交流・地域資源の乏しさといった『社会資源に起因する課題』などがある。課題はそれぞれが絡み合っており、多岐に渡る。その方の生活において最も大きく生活を阻害しているものを見出し、優先順位をつけてアプローチしていく。様々な職種が、自分の専門分野にこだわらず、広く大きな視野で見定めることが求められる。

【ケア会議の実情】
ケア会議を主催する地域包括支援センター側も、度重なるケア会議の経験を経て、次第にその地域独自のケアの知識と、多様なアプローチを徐々に確立しつつある。作業療法士に求めるものも、以前と比べて、より具体的な課題解決に直結する発言を期待されているのを感じる。それ故、時には主催者のコンセプトとは違う発言をしてしまい、作業療法士が叱咤される場面もあるようだ。会議で陥りやすい失態には、主に以下のものが挙げられる。(以下参照)

●作業療法士が陥りやすい例
①地域に関係ない提案内容、つまり地域事情をあまり知らずに発言している。
②その専門性から、必要以上にサービスを多用してしまい、市町村の財政を考慮していない。
③何とか結果を出そうと頑張るあまり、他職種との協調がとりづらい。
④対象者の人柄や性格、習慣などについての想像力が乏しい。 (その結果、利用するサービス以外の時間につながるような、活きた提案をしない)
⑤多職種に伝わりにくい言い回しや、専門用語を使うなどの発言をする。・・・etc

【必要となる要素】
上記に列挙した例は、会議においてはこの逆のことがそのまま大切な要素となってくる。専門性は勿論、その土地に根差した、包括的な視点が必要になってくるが、加えて他職種とうまく協働できるコミュニケーションスキルも重要な要素となっている。

日々の業務において、地域で活躍しているケアマネージャーや保健師は当然、その土地を熟知し、きめ細かい情報にも精通している。やはり作業療法士に期待されるのは、地域事情に則った実践的な『生きた情報』や、事例に似た実際の経験談などが提案が受け入れられやすい。仮にそれが失敗談であっても、実際に起こった具体的な情報は、事例の課題解決に結びつくケースも多い。

ケア会議に参加するにあたり、効果的な方法や、失敗しない言い回しはない。だが、押さえておきたい地域事情や特性は当然ある。そしてケア会議に参加する、しないに関わらず、常日頃から臨床場面や、人生のあらゆる場面で想像し、考えに、考え抜くことに慣れ親しんでおくことは、とても大切なことだと思う。これに加えて、ケア会議は、他者と協調する努力や、様々な交流場面で相手との距離を近づけるという常日頃の修行成果が発揮される場となっている。これは作業療法士にとっては臨床現場にもつながる必要不可欠な要素だと言える。

【まとめ】
我々、作業療法士は毎日の生活を送る上で、どんな方法でも生き抜くということを誰かに提案・援助できるのが仕事である。そのためには日々、ありとあらゆる方法や手段について考えを巡らせておきたい。考えるということは本当に苦しい。だが、考えに、考えて実践し続ける苦労が仕事の面白さにも直結してくる。ケア会議の場での発言は、それら苦労してきた成果が凝縮されたものだ。

会議体という短い時間内で、必要なタイミングで、必要な提案をするためにも、常日頃から考えて、想像するトレーニングは欠かせない。その努力こそが、誰かを助ける『生きた提案』となり得るのだと思う。


おすすめ書籍

  • 出版社 ‏ : ‎ 徳間書店 (2018/10/26)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2018/10/26
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本 ‏ : ‎ 256ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4198647054
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4198647056

  • 出版社 ‏ : ‎ 白夜書房 (2018/9/10)
  • 発売日 ‏ : ‎ 2018/9/10
  • 言語 ‏ : ‎ 日本語
  • 単行本(ソフトカバー) ‏ : ‎ 191ページ
  • ISBN-10 ‏ : ‎ 4864941815
  • ISBN-13 ‏ : ‎ 978-4864941815